2010年11月20日土曜日

頼まれて嬉しい

小屋入りしてからの作業が進んでいる。芝居の場合は音楽の現場と違って、みんな積極的に時間を守ろうとするし、それぞれの役割もはっきりしている し、交わされるコミュニケーションも密である。10〜20代の頃だったら間違いなく逃げ出したくなったであろう場所なわけだが、今は不思議とそんな気持ち にはならない。きっと、自分の役割が与えられたからだと思う。むかしは「そこのギアを軽油で洗っておいて」とか「倉庫からチャプスイを2ケース積んでおい て」とか、その都度言われて動くというのが僕の役割だったし、誰も僕に「あなたの曲をシーン8の暗転の後で演奏してください」などとは頼まなかった。そん な価値が無かったからだと思うし、単にそういう場所を目指さなかった(目指せなかった)というだけの事かもしれない。じゃあ今そうやって生田ちゃんから頼 まれて飛び上がるほど嬉しいかと言われると、夢中で一緒にものを作っているのだから改めて歓んでいる暇も無いのだが、少なくとも「頼まれる事の価値」には 気付いている。 

昨日の稽古は19時集合だったので、日中の空いた時間に松栄ホールのレコフェアへ行く。郵便屋さんと久々に顔を合わせて、 「あーお久しぶりです」と言ったら、「ん〜何だって?」と訊き返される。すっかり耳が遠くなってしまったそうだ。「家にあるレコード全部あげるよ...ま あ、全部反ってるけどね」などと言ったりするのは相変わらずだった。ここ数年はレコードを買うのは主にネットになってしまって、レコフェアやレコード屋で 探していたレコードに出会うという快感から遠く離れてしまった。甚だ不本意だけど、行っても買うものがないのだからしょうがない。ポートレイ・ヘッズがか げろうから出したソノシートとか、クレイオラがArt & Languageの展覧会のパンフに付けたシングルとか、そういうものは今はレコード屋から消えてしまった。1時間半近く会場内をうろうろした結果、購入 したのは「アマルガム」というピナコテカの通信紙(恐らく最終号)だけだった。オフセット12Pのささやかな冊子だが、ピナコテカ末期のタコの回収騒動の 事とか、「なまこじょしこおせえ」の解説とか、超過のスタジオ代を払おうとしないグランギニヨルへの呪詛などが綴られている。巻末には次回作として予定さ れていたA-MUSIKのLP(結局バルコニーから出た)の事とか、構想されていたインディペンデント・ジャーナルへの投稿の呼びかけなどが掲載されてお り、この当時の佐藤隆史氏の想いが詰まっている。佐藤氏は、当初はレコード制作の「作業の中に自分の自分らしい役割を見出していた」、しかし「しくじって しまった」と書いている。だから、次はしくじらないように、自分が主体となって「わたしのかわいいレコード」を出していきたいと書いている。「アマルガ ム」を読んでから、棚から「グランギニヨル」のLPを引っ張り出してみたら、ジャケに生々しい糊付の跡があった。きっと、佐藤氏が奥様と、自分の役割とい うものについて想いを馳せながら、せっせと手作業したのだろう。

コーエン兄弟祭りも佳境に入ってきて、先日は「レディ・キ ラーズ」を観た。監督が初めて兄弟名義になった作品で、トム・ハンクスが窃盗団の首領を胡散臭く演じている。スルメみたいな映画だった「真夜中のサバナ」 で過剰なキャラを演じていたイルマ・P・ホールがいい感じで立ち回っている。しかし最高なのはダイアン・デラノという女優の演じた「マウンテン・ガール」 か。窃盗団がカモフラージュのために「中世の音楽を合奏するグループ」のフリをするのだが、使用している古楽器がどれも現実離れしていてオカシイ。今では その楽器を使用するための楽曲さえも残っていないグロテスクな弦楽器があったりする。物語は他の作品同様、バタバタっと事が起こって、結局何も生み出さな いまま予想外の方向へ収斂してガクッと終わるというパターンだが、「オー・ブラザー!」に並んで娯楽性は比較的強いかもしれない。

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