2010年11月11日木曜日

ノーム

以前日記を書いていた時は、出来るだけその日に書くようにしていた。どんな瑣末な事もメモをしておいて、偏執的に書き綴っていたわけだが、最終的には自分で決めた「その日にその日の事を可能な限り書く」という縛りが重荷となって、書くのが億劫になってやめてしまったので、今度のはもっとゆるやかにしようと思っている。

というわけで最近の出来事。

火曜の夜に10-Boxで芝居の稽古に入る。フラスコとyumbo合同の稽古はこれで3回目だが、我々が呑気に過ごしている間にも役者さんたちは毎日のように集まっているわけで、前回よりもずっと演技や演出が深くなっている。台詞の言い方だったり、人物の位置関係をちょっと変えたりするだけでも全然違う話になってくるものだな、と思う。稽古場で久々に外崎さんに会った。白鳥さんとの「キリギリス」の時もスタッフで入っていたので、それ以来だろうか。いつ会ってもお互い別世界の人という感じで、相変わらず会話も弾まないけど、僕は外崎さんが好きで、その場に居るだけで楽しく感じる。

稽古のあと、コーエン兄弟の'07年作「ノー・カントリー」を観る。「バーン・アフター・リーディング」の前作にあたるわけだが、こちらは一転してシリアスな演出で占められている。家畜用のエアガンを携えてペッタリした顔で現れる「アントン・シガー」は、いままで観た悪役の中でも最悪の部類に入る恐ろしさだ。映画の中に正しい者はほとんど出て来ないし、善人は結局、何も解決出来ずに終わる。この、結局何もしないトミー・リー・ジョーンズの保安官の人物像は、一種の発明だと思う。ほとんど役に立たないのに、不思議と物語の中心というか核の部分にブレずに存在しているのが凄い。「パーフェクト・ワールド」のイーストウッド(大好きだけど)とは大違いだ。

翌日(昨日の夜)、同じくコーエン兄弟の'96年作「ファーゴ」を観る。これもまた大傑作の犯罪もの。この頃はまだジョエル・コーエンが単独で監督していたわけだが、映像の気合いの入り具合はこの時から既に尋常ではなかった。諸悪の根源であるメチャクチャな男・ジェリーを「マグノリア」の元クイズ少年役だったウィリアム・H・メイシーが、極めて魅力的な女保安官を「バーン・アフター・リーディング」で観たばかりのフランシス・マクドーマンドが演じている。 後で知ったのだが、マクドーマンドはジョエル・コーエンの奥さんらしい。登場するキャラクターはどれも素晴らしいが、僕はとりわけマージの旦那の「ノーム」が好きだった。普通なら、こういう映画で簡単に殺される奴の役にキャスティングされそうな役者(ジョン・キャロル・リンチ、『グラン・トリノ』の床屋!)なんだけど、想像を越える暖かさと寛ぎをもって妊婦のマージをサポートする最高の人物像として君臨している。彼は事件には一切関与しないし、マージが何をしているのかさえ把握していないが、彼も「ノー・カントリー」のジョーンズ同様、なぜか常に物語の核に存在し続けている。一方、物語に関与もしないし結局何だったのか分からない「マイク・ヤナギタ」とマージのエピソードも忘れ難い魅力があった。カットしてしまっても映画的には何ら支障のないくだりだが、「ファーゴ」を形成するにはやっぱり必要なんだろうな。

0 件のコメント:

コメントを投稿